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研究レポート

不動産登記事項証明書(登記簿謄本)の見方 第2回

著者:弁護士法人リバーシティ法律事務所

2009/3/27

 第1回で市川一造さんから市川一男さんへの相続登記が完了しましたので、土地が売却できる状態になりました。

 第2回は市川一男さんからリバーエステート㈱に売却された際の登記簿の変化を見ていきましょう。

(1) 売買及び抵当権設定

 土地を購入する際に現金一括で支払う方は、あまりいらっしゃらないかと思います。購入者が不動産業者の場合も金融機関から融資を受けることが通常です。
 リバーエステート㈱は、今回の土地購入するに当たり、売買代金2000万円と造成にかかる費用200万円の合計2200万円を東西信用金庫から融資をうけることにしました。

 ここで、金銭の受け渡しの時期について、それぞれの意向があります。
① 市川一男さんの希望
 売買代金を受け取ってから、所有権を移転したい(それまで権利証等を渡したくない)。
② リバーエステート㈱の立場
 所有権が自分のものにならないと融資が受けられない。
 融資が受けられないと、売主にお金が払えない
③ 東西信用金庫の希望
 抵当権設定の登記がされてから融資をしたい(それまで無担保となってしまうので)

 そこで、妥協点として所有権移転から抵当権設定までの登記が確実に行える書類が揃っていることが確認できたら、融資をするということになります(売買契約、融資、代金決済の書面の取り交わしとお金の受け渡し同時に行われる)。

 今回は平成18年8月30日に東西信用金庫市川駅前支店で上記取引が行われました。

 所有者は市川一男からリバーエステート㈱になり、東西信用金庫の抵当権が設定されます。

 抵当権は受け付けられた順番で不動産が競売された時のお金を受け取ることができるので、他の人に先に抵当権等を登記されてしまうと、予定していた金額が回収できなくなってしまいます。
 そのため、所有権移転と抵当権設定の2つの登記をまとめて法務局窓口に提出して続きの受付番号がうけられるようにして、間に他の登記が入らないようにします。

登記が完了すると次の状態になります。

表は、左右にスワイプして閲覧可能です。

【権利部(甲区)】  (所有権に関する事項)

【順位番号】

【登記の目的】

【受付年月日・受付番号】

【原因】

【権利者その他の事項】

1

所有権移転

昭和55年9月25日第13625号

昭和55年6月20日相続

所有者  市川市市川東一丁目23番地9 市川一造                     順位2番の登記を移記

 

余白

余白

余白

昭和63年法務省令第37号附則

第2条第2項の規定により移記

平成16年11月25日

所有権移転

平成18年5月11日第5721号

平成10年2月16日相続

所有者
市川市市川東一丁目23番地9        市川一男

所有権移転

平成18年8月30日第11384号

平成18年8月30日売買

所有者

市川市北八幡一丁目1番1号

リバーエステート株式会社

表は、左右にスワイプして閲覧可能です。

【権利部(乙区)】  (所有権以外の権利に関する事項)

【順位番号】

【登記の目的】

【受付年月日・
受付番号】

【原因】

【権利者その他の事項】

1

抵当権設定

平成18年8月30日第11385号

平成18年8月30日金銭消費貸借平成18年8月30日設定

債権額  金2200万円

利息    年4.2%(年365日日割計算)

損害金  年14.5%(年365日日割計算)

債務者  市川市北八幡一丁目1番1号

リバーエステート株式会社

抵当権者 千葉市中央区南中央四丁目13番2号

東西信用金庫

これは登記記録に記録されている現に効力を有する事項の全部を証明した書面である

 甲区3番と乙区1番が追加されました。受付番号が平成18年8月30日第11384号、平成18年8月30日第11385号と続き番号になっているのが分かります。

甲区 順位番号3番について
 所有権が移転した場合、元の持主(今回の市川一男さん)の名前が消されたり、線が引かれたりすることがありません。今回のように持主が単独であれば分かり易いですが、何人かで共有している場合には現在の所有者が誰であるかを丁寧に見ていく必要があります

共有となっている場合の記載例

表は、左右にスワイプして閲覧可能です。

1

所有権移転

昭和60年1月4日第5号

昭和59年11月12日相続

共有者  持分2分の1  乙

持分6分の1  A

持分6分の1  B

持分6分の1  C

乙持分、B持分全部移転

平成2年3月9日第5721号

平成2年2月27日贈与

共有者  持分6分の4  A

C持分全部移転

平成8年9月1日第9384号

平成8年7月2日相続

共有者  持分12分の1 イ

           持分12分の1 ロ

この例では 乙→2番で全部贈与しているので持主ではない
        A→1番で6分の1、2番で6分の4を取得したので合計の6分の5を所持
        B→2番で全部贈与しているので持主ではない
        C→3番で相続により移転しており持主ではない
        イ→3番の相続で12分の1取得
        ロ→3番の相続で12分の1取得
となっており、現在はA(全体の12分の10の権利)、イ(12分の1)、ロ(12分の1)の3人で持っていることになります。

乙区 順位番号1番について
【原因】
・日付が2つ入っていますが、前の日付がお金を貸した(金銭消費貸借)日で後の日付がこの土地を担保に入れる契約(抵当権設定契約)をした日です
【権利者その他の事項】
・債権額は最初に貸した金額です。月々返済されていき貸し金の残額は減っていきますが、いちいち登記されませんので登記簿からは現在の残額は分かりません。
・利息、損害金についても変動金利などで金利が変わっていても登記簿からは判断できません。
・債務者は土地の所有者と異なっていても構いません(この場合の所有者は物上保証人と呼ばれます。債務者が支払いを怠った場合、預貯金などその他の財産から支払う必要はありませんが、担保に提供した不動産を失うことになります)。

 

次回、第3回は土地が個人の買い手に移転するところを通して、抵当権の抹消などをみていきましょう。

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