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研究レポート

3 給料や雇用に関するQ&A

2011/4/22

Q

現在、行政から避難命令が出ていて、自宅から離れて避難生活をしており、会社に出勤できていません。会社自体は営業を行っており、会社から自宅待機を命じられているわけではありません。この場合に、給料を支払ってもらえるのでしょうか。

給料の支払いは受けられません。

今回の欠勤は、労働者の都合によるものではありませんが、会社の都合によるものでもありませんので、賃金の支払いは受けられませんし、休業手当の支払いがない場合であっても労働基準法第26条違反とはなりません。



Q

現在、行政から屋内退避命令が出ており、会社に出勤できません。この欠勤を理由に解雇されないでしょうか。

解雇をするには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められなければなりません(労働契約法16条)。

この場合の欠勤は、行政からの屋内退避命令のために出勤できないというのですから、欠勤に正当な理由がある場合ということができます。 欠勤に正当な理由がある以上、この欠勤を解雇理由とすることは、「客観的に合理的な理由」があるとはいえませんから、解雇はできないものと考えられます。



Q

就業時間中、取引先に電車で向かっていた時に、地震が発生し、電車が急停車したために、けがをしてしまいました。この場合、業務上災害となり、労災保険給付を受けられますか。
 また、震災で会社が被害を受けたため、労災の請求書等を出せないのですが、労災保険給付を受けられますか。

厚生労働省の発表したQ&A (http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000169r3.html) によると、
「仕事中に地震や津波に遭い、ケガをされた(死亡された)場合には、通常、業務災害として労災保険給付を受けることができます。

これは、地震によって建物が倒壊したり、津波にのみ込まれるという危険な環境下で仕事をしていたと認められるからです。「通常」としていますのは、仕事以外の私的な行為をしていた場合を除くためです。」とされています。
今回の場合には、業務上災害となり、労災保険給付を受けることができます。

また、厚生労働省は、各都道府県労働局に対し、
「今回の地震により、被災労働者の所属事業場等が倒壊した等の理由から、労災保険 給付請求書における事業主証明を受けることが困難な場合には、事業主証明がなくと も請求書を受理すること。
また、被災労働者が療養の給付を受けていた医療機関が倒壊した等の理由から、診療担当者の証明が受けられない場合においては、診療担当者の証明がなくとも請求書を受理すること。
なお、この場合、請求書の事業主証明欄の記載事項及び診療担当者の証明欄の記載事項を請求人に記載させ、当該証明を受けられない事情を付記させること。」
との通知を出しています(平成23年3月11日 基労補発0311第9号)。 このため、会社が労災の請求書等を出せない場合であっても、労災保険給付が受けられるようになっています。



Q

地震のために、勤務先の建物が倒壊し、業務を再開することができないので廃業することになりました。 勤務先から解雇を言い渡されたのですが、この場合、解雇は有効なのでしょうか。 また、これまでの賃金も退職金も払えないと言っていますが、支払いを受ける方法はありませんか。

客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇は権利の濫用として無効となります(労働契約法16条)。

業務を再開できないために解雇するというのは、いわゆる整理解雇にあたります。 整理解雇については、
(1)人員削減の必要性があるか、
(2)解雇回避努力義務を果たしているか、
(3)人員選定に合理性があるか、
(4)労働者、労働組合と十分な協議を行っているか、
という4つの点から、有効か無効かが判断されます。
業務を再開することができないとしても、これらの4つの点から、無効とされる可能性があります。
 なお、地震の直接的な被害を受けていない場合には、労働基準法第19条および第20条の「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」には原則として該当しないとされていますので、経営者は注意が必要です。

未払いの賃金がある場合には、本来は会社が支払い義務を負います。
しかし、会社が被災し、事業再開の見込みがなく、賃金の支払い能力がないという場合には、独立行政法人労働者健康福祉機構の賃金立替払制度が利用できる場合があります。
 なお、今回の東日本大震災については、賃金立替払制度の申請に必要な書類の簡略化などの措置が取られていますので、最寄りの労働基準監督署に問い合わせてください。

退職金が就業規則や労働契約などに明記され、計算可能な場合には、退職金を請求する権利が発生し、勤務先は退職金を支払わなければなりません。
 こちらについても、賃金立替払制度の対象となる場合がありますので、最寄りの労働基準監督署に問い合わせてください。



Q

震災で色々と被害を受け、お金が必要になりました。給料の前払いを要求できないでしょうか。

労働基準法第25条には、「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合において、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。」と定めています。

今回の震災は、この「災害」に該当しますので、すでに働いたり、有給を取得したりしている部分のうち、給料の支払日が来ていないものについては、前払いを請求することができます。
 しかし、働いていない部分の給料については、支払うように請求することはできません。
 もちろん、働いていない部分についても、会社が任意に応じれば、前払いを受けられますが、賃金を計算した場合に、前払いした額が本来払うべき額よりも多かったということもありえます。
この場合、後から支払われる給料との間で調整的相殺をすることができるとした最高裁判例があります(最高裁判所第一小法廷昭和44年12月18日判決 民集23巻12号2495頁、最高裁判所第二小法廷昭和45年10月30日判決 民集24巻11号1693頁)ので、注意が必要です。



Q

地震の影響で欠勤する者が多く、時間外労働や休日出勤を命じられています。時間外労働や休日出勤を命ずる業務命令には従わなくてはいけないのでしょうか。

使用者との間で労働基準法第36条に定められている協定が結ばれていて、雇用契約書や就業規則などに、時間外労働や休日出勤を命ずることがあるとの規定が置かれている場合には、業務上の必要性がないとか労働者に時間外労働や休日労働を行わないやむを得ない理由があるなど、権利の濫用と認められる場合でなければ、業務命令は有効なものですので、従う義務があります。



Q

事業場が地震の影響で休業しています。この場合、失業保険の給付を受けることができますか。

「災害時における雇用保険の特例措置」があり、事業所が被災し、事業を休止・廃止したために、賃金を受けることができない場合には、実際に離職していなくても失業給付を受給できます。

また、一時的に離職を余儀なくされた場合、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、失業給付を受給できます。
いずれの場合も、最寄りのハローワークに問い合わせてください。

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