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研究レポート

4 不動産に関するQ&A

2011/4/25

(1)持ち家について

Q

地震、津波で家を失った。住宅ローンが残っているが、払う必要はあるのか。

法律上は、依然として支払義務が残ります。

ただし、金融機関によっては、金利の減免や支払猶予の取扱いを行っているところもあります。
たとえば、住宅金融支援機構では、①返済金の払込みの据置(被災の程度に応じて、1年~3年)、②据置期間中の金利の引下げ(被災の程度に応じて、0.5%~1.5%減)、③返済期間の延長(被災の程度に応じて、1年~3年) などの措置を用意しているようです。
具体的な条件については、住宅ローンの商品特性や被災の程度などによって異なってきますので、金融機関に確認すると良いでしょう。

また、地震保険に対して質権が設定されていた場合、その保険金が金融機関への返済に回り、結果的に残ローン額が減少することも考えられます。 住宅金融支援機構の住宅ローンの場合、融資条件の1つに、火災保険への加入と、加入した火災保険について、住宅金融支援機構の質権を設定することが挙げられています。

今般の震災により、その火災保険金が支払われる場合には、火災保険金に対して住宅金融支援機構が質権を行使し、保険金によって住宅ローンの支払に充てられることが考えられます。
この結果、残ローンの金額が減少したり、場合によっては、ローンが完済となることもあり得るところです。

金融機関が地震保険を融資回収の方法とするか否かは、金融機関の方針などにもよります。金融機関によっては、被災者支援のため、あえて地震保険を融資回収方法としないケースも考えられます。
この点についても、金融機関で確認されることをお勧めします。



Q

地震、津波で家の一部が損壊した。売主や建築業者に対して責任追及をしたい。

この場合、民法570条に基づく売主に対する瑕疵担保責任、民法638条の建築業者に対する瑕疵担保責任、民法709条に基づく不法行為責任などが考えられるところです。

しかし、実際に責任追及ができ、賠償責任が認められるかどうかは、ケースバイケースとしか言いようがありません。
今回の震災の場合は、不可抗力ないし過失なしと判断されるケースが多いものと思われます。



Q

地震、津波で家の一部が損壊した。まわりの家は、ほとんど被害を受けていないのに、私の家だけ損害状況が激しい。売主や建築業者に対して責任追及をしたい。

損壊の原因が、設計ミス等にある場合には、賠償責任を追及することも考えられます。

ただし、今回の損壊の原因が設計ミスにあったことが客観的に明らかといえる程度であると証明できることが必要です。
したがって、損壊の様子を写真撮影したり、建築士による診断を得ておく必要があるでしょう。



Q

地震、津波で家の一部が損壊した。家を建てる際に、住宅瑕疵担保責任保険に加入していた。この保険金を受け取ることはできるか。

住宅瑕疵担保責任保険を引受けている財団法人住宅保証機構によれば、今回の震災による住宅の倒壊・損傷等の損害について、まもりすまい保険及び住宅性能保証制度においては、保険金の支払い対象とはならないと表明しています。

これは、住宅瑕疵担保責任保険は、もともと、住宅の設計ミスなどの瑕疵による事故を補償するものであり、地震や津波などの事故を補償するものではないことが理由です。
しかし、震度が低い地域における住宅で、損傷等の原因が引渡時の瑕疵によると思われる場合には、場合によっては保証の対象となる場合もあるようです。
詳細は、財団法人住宅保証機構にお問い合わせください。



Q

建築途中の家が津波で流された。建築費用を払わなくてはならないのか。

注文住宅の場合、約款で「不可抗力によって工事の出来高部分や搬入済みの建築資材に損害が生じたときは、請負業者は注文者に速やかにその状況を報告し、請負業者や注文者などで協議の上、注文主がその損害を負担する」と定められているケースが多いようです。

この場合、この約款を文言どおり適用すれば、出来高部分に対応する費用を注文者が支払う必要があります。

しかし、今回の震災においては、このような画一的処理を行わない場合も想定できるものと思われます。 したがって、請負業者とよく協議する必要があります。



Q

マンションを購入する予定で、すでに手付金として購入代金の一部を手付金として支払済みである。ところが、購入予定のマンションが地震により倒壊してしまった。契約を解除したいが、手付金は戻ってくるか。

契約約款により、地震などの不可抗力が発生したときには、売買契約を解除し、手付金は返還されると規定されている場合があります。この場合には、手付金を戻してもらうことは可能であると考えられます。

他方、そのような約款がない場合には、民法534条1項の規定により、手付金の返還を受けられない可能性もあります。

この点は、契約書にどのように記載されているか、事案によって異なりますので、約款をよく読んで、販売会社と協議する必要があります。



Q

マンションを購入する予定で、すでに手付金として購入代金の一部を手付金として支払済みである。マンション自体は倒壊していないが、取引は自粛したいと思っている。契約を解除したいが、手付金は戻ってくるか。

この場合には、不可抗力による解除とはいえませんので、手付金の返還を求めるのは難しいものと思われます。



(2)賃貸借関係

Q

賃貸アパートに居住していたが、震災で建物が全壊し、まったく使用することが不可能となった。建物賃貸借契約はどうなるのか。

原則として、契約は終了することになります。

建物賃貸借契約は、
①大家が賃借人に対して建物を使用収益させる義務と、
②これ対する賃借人から大家に対する賃料支払義務が契約の本質的要素である
と解されています(民法601条)。
したがって、震災という事情によって、大家が使用収益させられなくなった場合には、契約の本質的要素を提供することができない以上、契約は終了するものと解されています。
ただし、罹災都市借地借家臨時処理法の適用がある場合には、特別の保護が与えられる場合があります。



Q

借りている家が地震で全壊し、住めなくなった。今後も賃料を支払続ける必要はあるか。

ありません。

賃料は、建物を使用収益することの対価として支払われるものです。したがって、震災によって借家全体の使用収益ができなくなった場合には、賃料支払義務の全部を免れるものと解されます。



Q

借りている家が地震で全壊し、住めなくなった。既に支払った翌月分の賃料を返してほしい。請求できるか。

請求できる可能性があります。

賃貸借契約では、賃料の支払時期について、翌月分の家賃を前払することという特約が設定されていることがあります。上記のとおり、賃料は、建物を使用収益することの対価として支払われるものであり、建物が全壊したことにより、使用収益が不可能となった場合には、賃貸借契約そのものが当然に終了します。

したがって、まだ提供を受けていない期間に対する賃料支払義務も発生しないと考えられることから、既払賃料の返還を請求することができると考えられます。

なお、「大家の使用収益させる義務は、賃料支払義務の先履行」であると解されており、大家の使用収益させる義務は、賃貸借契約の本質であると考えられます。

したがって、大家が使用収益をさせられない状況であっても賃料が発生し続けると解することは相当ではなく、賃料前払特約は、使用収益させる義務に対する賃料支払義務の履行時期に対する特約であると考えられます。

このことからすれば、賃料前払特約を根拠に、大家が既払い賃料を保持し続けることは困難であると考えられます。



Q

借りている家が地震で一部損壊した。今後も今までどおりの賃料を支払続ける必要はあるか。

大家に対して、賃料減額の請求をすることが考えられます。

上記のとおり、賃料は、建物を使用収益することの対価として支払われるものであることから、震災によって借家の「一部」の使用収益ができなくなった場合には、その部分に対応する限度で賃料支払義務を免れるものと解されます(民法611条)。

ただし、実際の使用収益にどの程度の障害が出ているのか、問題となるケースも発生することが考えられます。

そこで、後日の紛争を防ぐため、その部分を写真撮影したり、危険度診断を受けるなど、証明可能な証拠を残しておくと良いでしょう。

また、減額請求をすることなく、借家人の一方的な判断で減額した家賃だけを支払った場合にも紛争となりやすいことから、注意が必要です。



Q

借りていた賃貸アパートが全壊したため、退去することになった。敷金の返還を受けることはできるか。

すでに述べたとおり、アパートが全壊した場合には、賃貸借契約は終了することとなります。

したがって、敷金の返還を求めることが可能です。

ただし、滞納賃料等があった場合には、敷金から差し引かれることになります。



Q

借りていた賃貸アパートが全壊したため、退去することになった。敷金の返還を受けることはできるか。賃貸借契約書によれば、「地震の際には、敷金を一切返還しない」という特約があるが、これは有効なのか。

この点は争いのあるところですが、地震のような不可抗力が発生した場合まで賃借人に負担を求めるのは相当でないとして、このような特約は無効であると解する見解が有力ですし、特約は無効であると判断した裁判例もあります。

したがって、「一切返還を受けられない」という特約の無効を主張して、大家に対して返還を求めることが考えられます。



Q

借りていた賃貸アパートが全壊したため、退去することになった。賃貸借契約締結にあたり、礼金を差入れた。この返還を求めることはできるか。

礼金」の法的性質には争いがあります。一般的には、賃料の前払的性質や場所的利益の対価性、のれん代などの性質があると言われますが、地域性や商慣習によるところも大きく、確定的な見解があるわけではありません。
したがって、ケースバイケースとしか言いようがなく、その「礼金」の趣旨について検討した上で、大家と協議して返還を求めていくことになるかと思われます。



Q

幸い、建物には大きな被害はなく、修繕をすれば使用可能のように見える。しかし、大家は多額の修繕費用がかかるとして、これを機会に退去してもらいたいと言っている。退去しなければならないか。

建物が「滅失」に至っていない場合には、依然として建物賃貸借契約は存続します。したがって、建物賃貸借契約が存続していることを前提に、その解約が認められるかが問題となります。

この点、借地借家法は、大家側からの賃貸借契約の解約の申入れについて、正当な事由が認められる場合でなければ、することができないと規定しています。

ここでいう「正当事由」があるか否かは、大家と賃借人などが建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して判断されることになります。

このケースでも、建物の現況(損壊の程度、修繕費用の金額、賃料額、耐用年数等)によって判断されることになります。
また、場合によっては、立退き料の提供により、正当事由があると認められる場合もあります。

したがって、大家と今後の見通しなどをよく協議し、退去すべきか否かを判断すると良いでしょう。



Q

地震により借りていた建物に損壊が生じたが、大家がなかなか修繕してくれない。そこで、賃借人側で修繕しようと思うが、その費用を大家に請求することはできるか。

建物賃貸借契約において、大家は建物を使用収益させる義務を負っていることから、大家には修繕義務が生じます。したがって、一義的には大家に対して、修繕を求めるべきであると考えられます。

しかし、大家が修繕してくれない場合には、事前に大家に承諾を得ておいた方が良いでしょう。
また、軽微な修繕や、建物の使用目的に即した形での修繕であれば、承諾なくして賃借人側が修繕することも可能です。ただし、賃借人側ができるのは「修繕」の範囲内であって、「改造」や「増築」については、大家の承諾が必要ですし、承諾を得なかった場合には、信頼関係の破壊を根拠として、賃貸借契約が解除される場合もあります。

費用については、建物の使用収益を行うために行った必要費については、大家に請求することができます。ただし、必要費の請求にあたっては、事前に大家に対する通知を行う必要があり、これを怠ると法律上当然には請求できないこととなりますので、注意が必要です。



Q

罹災都市借地借家臨時処理法とはどのような法律か。同法が適用されるとどうなるか。

罹災都市借地借家臨時処理法(以下、罹災都市法といいます。)は、罹災都市における借地借家人の生活の安定を図る応急的な復興対策を目的とするものとして制定された法律で、関東大震災後に成立した旧借地借家臨時処理法をベースにしています。

罹災都市法は、既存借地権の保護と既存借家権の保護の観点から、次の3点について、規定しています。

1 優先借地権・借地権優先譲受権
(1)優先借地権
罹災建物が滅失した当時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地に借地権の存しない場合には、その土地の所有者に対し、2年以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な借地条件で、その土地を賃借することができます(罹災都市法2条1項)。
土地所有者は、建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合その他正当な事由があるのでなければ、優先借地権の申出を拒絶することができません。
これを優先借地権といいます。

(2)借地権優先譲受権
罹災建物の敷地又はその換地に借地権の存する場合には、その借地権者に対し、2年以内にその者の有する借地権の譲渡の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な対価で、その借地権の譲渡を受けることができます(罹災都市法3条)。
これを借地権優先譲受権といいます。

2 優先借家権
罹災建物が滅失した当時におけるその建物の借主は、その建物の敷地又はその換地にその建物が滅失した後、最初に築造された建物について、その完成前に賃借の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な借家条件で、その建物を賃借することができます(罹災都市法14条1項)。  これを優先借家権といいます。

3 借地の特則
(1)対抗要件の特則
借地権は、建物の登記がなくても、5年間は、その土地に権利を取得した第三者に対して対抗することができます(罹災都市法10条)

(2)残存期間の特則
借地権の残存期間が10年以内のものは、一律10年間延長されます(罹災都市法11条)

(3)消滅に関する特則
土地所有者は、2年以内に、借地権者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内に、借地権を存続させる意思があるかないかを申し出るように、催告することができます。
そして、借地権者が、その期間内に借地権を存続させる意思があることを申し出ないときは、その期間満了の時、借地権は、消滅します(罹災都市法12条)。



Q

罹災都市法が適用されるのは、どのようなときか。

罹災都市法が定める「罹災建物」とは、「災害のため滅失した建物」のことをいいます。したがって、建物について罹災都市法が適用されるのは、建物が滅失してしまった場合です。

上記のとおり、建物が滅失した場合には、建物賃貸借契約は終了するものと解されていますが、罹災都市法の適用がある場合には、もともとの建物賃貸借契約は終了するものの、罹災都市法の特則により、さまざまな権利が付与されることになります。

他方、建物が滅失していない場合には、罹災都市法の適用はありません。また、建物の一部機能に問題があるとしても、大家の使用収益させる義務は提供可能である以上、もともとの建物賃貸借契約は終了せず、これを修正する余地があるかどうかが検討されることになります。

建物は滅失。罹災都市法の適用なし → もとの賃貸借契約は終了する。
建物は滅失。罹災都市法の適用あり → もとの賃貸借契約は終了するが、罹災都市法の特則の適用がある。
建物は滅失していない → もとの賃貸借契約が存続する。



Q

「滅失」とは、どのような状況のことをいうのか。

建物の「滅失」について、民法や借地借家法、罹災都市法には明確な規程はありません。

この点、火災により建物が滅失したかどうかについて、以下の最高裁判所の裁判例があり、参考になるかと思われます。

 「賃貸借の目的物たる家屋が滅失した場合には、賃貸借の趣旨は達成されなくなるから、これによって賃貸借契約は当然に終了すると解すべきであるが、家屋が火災によって滅失したか否かは、賃貸借の目的となっている主要な部分が消失して賃貸借の趣旨が達成されない程度に達したか否かによってきめるべきであり、それには消失した部分の修復が通常の費用では不可能と認められるかどうかをも斟酌すべきである。」(最高裁昭和46年6月22日民集21巻6号1468号)



Q

市役所の担当者が建物の被害認定をしたいといっている。建物被害認定で「全壊」と判定された場合、「滅失」にあたるのか。応急危険度判定で「危険」と判断された場合はどうか。

「滅失」に類する概念として、建物被害認定における全壊・半壊や、応急危険度判定、損害保険会社の損害判定などの概念があります。 建物被害認定については、内閣府のホームページをご覧ください。 >http://www.bousai.go.jp/shien_higainintei.pdf

建物の評価については、さまざまな基準があるところであり、必ずしも、建物被害認定の「全壊」=法律上の「滅失」と評価されるわけではありません。
しかし、「滅失」の評価にあたって、建物被害認定で「全壊」と評価されたことや、応急危険度判定で「危険」と評価されたことは、判断要素の1つとして考慮されることになると思われます。

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