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Q
12 認知症の人が裁判に巻き込まれたら?
最高裁判所が発表している「成年後見関係事件の概況」(令和6年1月~12月)という資料を参照すると、後見制度を利用する際の申立ての動機としてもっとも多いものは「預貯金の管理・解約」ですが、訴訟手続等を理由とした申立もあります(令和6年中では2301件)。
本人の認知機能が低下したとしても、後見人・保佐人・補助人が就任し、きちんと裁判に対応してもらえればよいのですが、訴える側が相手の認知機能の低下を把握できず裁判を起こした場合、何のきっかけもなければ、裁判所も訴えられた側の認知機能の低下を把握できず、そのまま判決がされてしまう場合もあります。
判決には、既判力という効力があり、一度判決が確定してしまうと、これを覆すことは大変困難です。
そのため、認知症の方が裁判に巻き込まれているぞ、ということで、その裁判に対応するために、後見制度が利用される、ということがときどきある訳です。
特に、認知症の方が独居している場合に問題が深刻になりがちです。
こういった方が裁判に巻き込まれているようだ、ということは、周囲の支援者(介護職、包括職員、親族)が、裁判所からの手紙や封筒を見つけて判明することが多い印象です。
封が開けられていない場合、手紙の一部だけが存在する場合、何故か封筒だけが存在する場合など、いろいろなパターンがあり、発見された資料だけでは、何の裁判が起きていて、どんな状況になっているのかわからない、ということも多いです。
裁判は、まだ判決が出ていない、という状態であれば、本人の認知機能の低下の状況を知らせることで、裁判をいったん止めてもらう、ということができることも多いです。
認知機能が低下しているということは、その方に訴訟能力(有効に訴訟に対応する能力)がないということになりかねません。訴訟能力は訴訟要件とされており、裁判所が調査しなければならない事柄ですから、裁判所が本人の認知機能が低下していることを把握したことで、訴訟が有効に進められるのか検討が必要となり、そのために裁判の進行自体が止まることがあるという訳です。
裁判所に知らせる、ということ自体は、必ずしも本人がしなければならない訳ではなく、発見された資料から、事件番号や当事者名を伝え、家族や支援者などの第三者が知らせることもできます。
認知機能が低下し、十分な判断ができない状況で、裁判を受けることは本人にとって酷と言えますから、本人の裁判を受ける権利を守る、という観点からも、後見の申立てとは別に、できるだけ早く、裁判が係属している裁判所に状況を伝えることが必要と考えられます。
11「保佐・補助の本人申立の支援(福祉関係者の皆様へ)」の(3)で特定援助対象者法律相談援助という制度を紹介しましたが、成年後見制度の利用はともかく、まずこの裁判にどう対応すべきか、という観点から早急に法律相談をする、ということも一案として考えられます。
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