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事件の概要
介護老人保健施設(以下、「老健」という。)において、入所者Aが食事の際に提供された刺身を誤嚥して窒息、死亡した件について、死亡した入所者の相続人ら(X1、X2,X3)が施設を経営する法人に対し、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求をした事案。
当事者
原告:X1,X2,X3
被告:老健を経営する医療法人Y
請求の内容(抜粋)
被告は、原告らに対し、各自1159万5894円...を支払え。
判決主文(抜粋)
被告は、原告らに対し、各自734万5227円...を支払え。
老健が刺身をAに提供したことについて、介護契約上の安全配慮義務違反、過失が認められる。
(理由)
・ケアプラン、認定調査票、サービス担当者会議のいずれにおいても、Aに誤嚥の危険があることが指摘されていた。
→老健であれば、Aの誤嚥の危険性については認識していた、あるいは認識可能であった。
・老健で提供した刺身は、健常人の食べるものとそれほど変わらない大きさであり、老健で嚥下しやすくするための工夫をしたことは認められない。
・刺身は咀嚼しづらく、噛み切れないこともあるため、嚥下能力が劣る入所者に提供するのに 適しているとは言い難い。
→Aの誤嚥の危険性に照らせば、そのような刺身を提供すれば誤嚥する可能性が高いことを十分予想しえたはずである。
① Aの遺失利益 285万5682円(Aは、死亡前年額322万円余りの年金を受給していた)
② 慰謝料 1500万円
③ 葬儀費用 150万円
④ 付添看護費 67万円(日額5000円×134日)
⑤ 弁護士費用 原告ら各67万円
Aに過失があったとは認められない。
(理由)
本件では、Aが刺身を常食で提供してほしいと希望したことから、老健は刺身を常食で提供したものであり、Aに過失があると主張している。
この点裁判所は、①事故当時のAの能力(Aは認知証であった)から考えて、Aが誤嚥の危険性及び誤嚥した場合には重篤な結果が生じうることを十分認識していたとは考え難いこと、②かつそのような判断を一人でするのに十分な能力を有していたとは考え難いこと、③老健は介護の専門機関であること、からすれば、Aに過失があったとは認められないと判断した。
参考裁判例
東京地裁平成22年7月28日判決(判例時報 2092号99頁)
介護付き有料老人ホームの入居者が食事中誤嚥事故で死亡した件で、死亡した入居者について、入居時・入居後を通じて誤嚥の兆候が存在したとは認められず、施設側が入居者に誤嚥による窒息が生じる危険があることを具体的に予見することは困難であったとして、施設側に安全配慮義務違反はなかったと判断した。
東京地裁立川支部平成22年12月8日判決(判例タイムズ 1346号199頁)
デイサービスの利用者が昼食中、食事を誤嚥して死亡するに至った件について、デイサービス側は介護保険法等の関連法令に従った職員の配置をしており、職員もその役割を的確に果たしていたこと、死亡した利用者については、サービス担当者会議、通所リハビリテーションサービス計画書・個別リハ計画書のいずれにおいても、食事の提供方法について言及しておらず、デイサービス側が死亡した利用者に通常食を提供したことに過失があるとはいえないとし、デイサービス側の不法行為責任、債務不履行責任についていずれも認められないと判断した。
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