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研究レポート

6 介護事故判例紹介「転倒」②

著者:弁護士 荒川俊也

2012/4/19

事件2 福岡地裁平成15年8月27日判決(判例時報1843号133頁)

事件の概要
 デイサービスを利用していた当時95歳の原告が、被告の運営するデイサービス施設(以下、「本件施設」という。)内の静養室において昼寝から目覚めた後に、静養室入口付近の段差で転倒し大腿骨骨折の障害を負い、それによって歩行不能、認知症の憎悪の後遺障害を負ったとして、被告に対し、安全配慮義務の債務不履行に基づき損害賠償請求をした事案。

当事者
原告(事故当時95歳)
被告:本件施設を経営するNPO法人

請求の内容(抜粋)
被告は、原告に対し、金1340万円...を支払え。

判決主文(抜粋)
被告は、原告に対し、金470万円...を支払え。

主な争点
被告の過失の有無

争点に対する裁判所の判断
 事業者は、利用者の状況を把握し、自立した日常生活を営むことができるよう介護を提供するとともに、事業者が認識した利用者の障害を前提に、安全に介護を施す義務がある。

 本件事故は、被告が、原告の動静を見守ったうえで、昼寝から目覚めた際に必要な介護を怠った過失により発生したといわざるを得ず、被告には、本件事故により原告に発生した損害を賠償する責任がある。

(判断の理由)
・原告は、本件施設を52回利用していること
・原告はものに掴まるなどして歩行が可能であり、本件施設においても尿意を催すと歩行することがあったこと
・レクリエーションでは、立ち上がることが何度もあったこと
・布団やベッドで上半身を起こすこともあったこと
→自力で移動する能力があり、本件施設を利用するようになってからは、活動性を増していたこと
→原告が昼寝中に起き上がり、移動することは予見可能であった。

・静養室と床との段差は約40センチメートルあった。
・原告は95歳と高齢であり、居宅サービス計画書等の書面で転倒の危険があることは被告に知らされていた。
・原告には視覚障害があり、認知症もあり、被告は居宅サービス計画書の記載でこれらを知らされていた。
→原告が静養室入口の段差から転落するおそれがあり、被告はこのことを予見可能であった。

・本件事故当時、被告従業員は原告に背を向けてソファーに座っており、原告の動静を十分に把握できる状態になかった。
・被告従業員はほかの従業員に静養室近くでの「見守り」を引き継ぐことなく席を外した。
・ほかの従業員は、本件事故が発生した静養室が視覚となる位置で「見守り」をしていた。
・原告が目をさまし移動を開始した際、被告従業員はこれに気付かず、原告の寝起きの際に必要な介護もしなかった。
→本件事故は、被告が、原告の動静を見守ったうえで、昼寝から目覚めた際に必要な介護を怠った過失により発生した。

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