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研究レポート

8 健康食品の広告規制

著者:弁護士法人リバーシティ法律事務所

Q

 減量に効果のある新製品の健康食品(カプセル型)を通信販売で売り出す予定です。
 とてもよく効く自信があるので、「1日3回食前に飲むだけで、1ヶ月に5~10kgやせる!便秘も解消!」というキャッチコピーをつけた広告を出そうかと思います。
 何か法律的な問題はあるでしょうか。

1. 本件に関係しそうな規制

 本問であなたの売り出そうとしているものは健康食品ということですが、実は「健康食品」には、法令上明確な定義がありません。
 従って、あなたが食品だと思っていても、本当は「医薬品」であって薬事法による規制を受けるということもありえます。
 また、通信販売で売るということであれば、その販売方法等について、特定商取引法という法律による規制にも服することになります。
 以上の点につき、具体的に見ていきましょう。

2. 薬事法による規制を受ける場合について

(1) 本問のサプリメントは、本当に「食品」(食品衛生法第2条1項)といえるものでしょうか。もし「医薬品」に該当するものであれば、上述のように、薬事法による規制を受けることになりますので(薬事法第2条1項)、注意が必要です。

 薬事法は、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行い、医療上特にその必要性が高い医療品及び医療用具の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする法律です(同法第1条)。
 薬事法では、医薬品の取り扱い、広告等につき、詳細に規定していますし、これらの規定に反した場合の懲役や罰金といった罰則についても定めています。
 例えば、製造については厚生労働大臣の許可が必要となりますし、販売については都道府県知事の許可が必要です。

 また、通信販売の方法で医薬品を売ることは認められていません。
 広告についても規制がされ(同法66条乃至68条)、この点につき、医薬品等適性広告基準(昭和55年10月9日薬発第1339号厚生省薬務局長通知 別紙部分)が更に詳細に規定しています。
 従って、本件の商品が医薬品に該当するということであれば、以上の法律や基準をクリアーしなければ販売できないということになりますが、販売までのハードルは非常に高いといえるでしょう。

(2) 「医薬品」に該当するかどうかは、厚生労働省が示している「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」という通知に記載されている判断基準に従って判断されます。

 具体的には、原材料、効能・効果、形状、用法・用量の4つの基準により判断されるといえます。
 このそれぞれの基準にしたがって本問を検討してみましょう。

● 原材料

 上述の「医薬品の範囲に関する基準」に挙げられている原材料が入っていれば、医薬品となります。本問ではいかなる原材料が使われているのかは明らかではありませんが、もし入っていたとすれば、薬事法による規制に服することになります。相当数の原材料について規定されていますので十分に注意する必要があります。

● 効能・効果

 医薬品的な効能・効果を標榜していれば、医薬品と判断されることになります。
 そして、医薬品的な効能・効果を標榜しているといえるかどうかは、治療・体の機能増進・効能効果の暗示があるといえるかどうかで判断されます。
 本問でいえば、「便秘も解消!」という表現は、治療を暗示しているといえ、医薬品的な効能・効果を標榜しているということになり、薬事法の規制に服することになります。
 食品として売り出したいのであれば、広告にこのような表現は使うべきではないでしょう。

● 形状

 商品が医薬品的な形状であれば、医薬品としての扱いを受けることになります。
 医薬品的な形状とは、通常の食品としては流通しない形状かどうかで判断しますが、外観等により明らかに食品と認識されるものであれば、医薬品には該当しないとされています。
 本件では、カプセル型ということですので、そのままでは通常の食品としては流通しない形状といえ、医薬品的な形状を有していると考えられます。
 ただ、「本品は食品です」などとわかりやすく明記してあれば「明らかに食品と認識される」ものと思われますので、医薬品には該当しなくなります。従って、この点を改善すべきでしょう。

● 用法・用量

 医薬品的な用法・用量を標榜している場合には、医薬品として扱われ、薬事法の規制を受けることになります。具体的には、服用時期・間隔・量を記載している場合には、医薬品的な用法・用量を標榜しているということになります。
 そこで本件を見てみると、「1日3回飲むだけで」という表現がありますので、この点が医薬品的な用法・用量を標榜していると言えるでしょう。
 食品として販売したいのなら、「1日3回程度の飲用が目安です」等の表現に改めるべきでしょう。

3. 特定商取引法による規制について

 特定商取引法とは、訪問販売や通信販売など特定の形態の販売の取引を公正にして、購入者等の損害の防止を図ることによって購入者等を保護し、合わせて商品の流通等を適正かつ円滑にすることによって、国民経済を健全に発展させることを目的として定めされている法律です。

 この特定商取引法は、通信販売における誇大広告等を禁止しています(同法第12条)。
 また、経済産業省は、特定商取引法により誇大広告について取り締まる際の指針を発表しています。この指針によれば、商品の性能・効果・利益等に関する勧誘・広告については、その勧誘に際して告げられた内容又は広告において表示された内容の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められることがあります。
 そして「合理的な根拠」とは(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること(2)勧誘に際して告げられた、又は広告において表示された性能・効果・利益等と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることという2つの要件が満たされていることが必要なのです。

 この2つの要件が認めらる基準は厳しく、(1)については、試験・調査によって得られた結果や、専門家等の見解又は学術文献によることが求められていますし、(2)については、たとえば、本件での商品に含まれる主成分の含有量、一般的な摂取方法及び適度の運動によって脂肪燃焼の効果が期待できる事を言及したに留まるような資料では足りず、「食べるだけで5~10キロ痩せる」減量効果があることを実証したような資料でなくてはならないのです。
 ですから、本件のような広告をするためには、以上のような資料をそろえることが可能である必要があります。
本件のような広告の効果の合理的根拠を示す資料をそろえることは、困難なのではないでしょうか。
 以上のような観点からは、本件のようなキャッチコピーはつけるべきではないといえるでしょう。

 なお、経済産業省のホームページに、通信販売の広告が適正かどうかをチェックできるチェックシートが掲載されています。
 参考にされると良いでしょう。

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