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研究レポート

4 同業者によるブランドの盗用

著者:弁護士(日本・米国ニューヨーク州)・弁理士 南部 朋子

Q

当社Xは「NOPQR」というブランドで化粧品を製造・販売していますが、最近化粧品メーカーであるY社が「NOPQR」というブランドで化粧品を売り出しました。当社は指定商品を化粧品として「NOPQR」を商標登録していますが、Y社に「NOPQR」の使用を認めたことはありません。
当社はY社に対し、どのような法的な対抗手段がとれるでしょうか。

1. 結論

 XはYに対し、「NOPQR」というブランド名の使用をやめるよう請求でき、その際、Yに対し、「NOPQR」というブランドが付された化粧品を廃棄し、広告を除去する等の行為も合わせて請求できます。

 また、XがYの行為により損害を被った場合は、Yに対し損害賠償を請求でき、Yの侵害行為によりXの業務上の信用を害された場合には、Xは裁判所を通じて、この損害賠償に代え、又は損害の賠償とともに、Xの業務上の信用を回復するに必要な措置をとるよう要求できます。

 さらに、XはYを商標法違反あるいは不正競争防止法違反で刑事告訴することも可能です。

2. 解説

1 商標権侵害行為について

 Xが製造販売している化粧品のブランド「NOPQR」は商標にあたります。
 商標とは文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合 (下線部を「標章」といいます。)で、業として商品を生産、譲渡等する者がその商品について使用をするもの、あるいは業として役務を提供する者がその役務について使用をするものです。(商標法2条3項。以下、特に明示しなければすべての商標法の条文です。)
 商標法では、商標権者に指定商品等について登録商標を使用する権利を専有させています(25条)。商標を登録する時は、どのような商品又は役務に使用する商標なのかを指定する必要があり(6条1項)、これを指定商品・指定役務といいますが、商標法はこの指定商品・指定役務については、商標権者に登録商標を使用する権利を専有させています。

 本問では、Xは指定商品を化粧品として「NOPQR」を商標として登録していますから、化粧品については「NOPQR」を商標として独占的に使用する権利があります。
 したがって、Yが「NOPQR」というブランド名で化粧品を売り出すことは、正当な権限なくして他人の登録商標をその指定商品に使用する行為であり、商標権侵害にあたります。

2 商標権侵害に対する対抗手段について

 このような商標権侵害行為に対しては、商標法は商標権者に差止請求権(36条)という対抗手段を与えています。

 78条では商標権侵害行為に対する罰則が定められており、商標権を侵害したものは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せられることがあります。
 また、商標権侵害によって商標権者に損害が発生したら侵害者に対し、損害賠償請求ができます(民法709条)。なお、商標法では、損害額及び侵害者の過失を推定する規定があり、商標権者の権利保護を図っています(38条、39条、特許法103条)。
 さらに、裁判所は、商標権者の請求により、商標権者の業務上の信用を害した者に対し、損害賠償に代え、又は損害の賠償とともに、商標権者の業務上の信用を回復するに必要な措置を命ずることができます(39条、特許法106条)。代表的な信用回復措置としては、謝罪広告があげられます。

3 その他の対抗手段について

 このほか、Yの行為は不正競争防止法2条1項に定める不正競争行為のうち、同条1項1号の行為(商品・営業主体混同惹起行為)に該当するものと思われます。(Xの「NOPQR」という商標が著名ならば、同条1項2号の行為(著名表示冒用行為)に該当します)
 不正競争防止法においても、不正競争行為により営業上の利益を侵害された者に、不正競争行為の差止請求権(同法3条)、損害賠償請求権(同法4条本文)信用回復措置(同法7条)を認めており、侵害行為に対する罰則もあります。(同法14条)。ただし、不正競争防止法においては、損害額を推定する規定はありますが(同法5条)、不正競争をした者の過失を推定する規定はありません。
 よって、商標を登録してあるXとしては、商標法による救済を求めるほうが有利といえるでしょう。

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