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研究レポート

2 化粧品使用による被害と法律

著者:弁護士(日本・米国ニューヨーク州)・弁理士 南部 朋子

Q

ドラッグストアで、ヘアカラーを購入して使ったら、頭皮がかぶれてしまい、治療のため病院に通わなければならなくなりました。この場合、ドラッグストアやメーカーに治療費の支払いを請求できるのでしょうか。

1. ドラッグストアに対する請求について

 ドラッグストアと購入者とは、売買契約上の売主と買主の関係にありますから、お互いに契約上の債務を負います。つまりドラッグストアは、契約の目的物である新品のヘアカラーの引き渡し義務を負い、購入者は代金支払義務を負います。そして、売買契約の当事者は、お互いにその義務を果たさなかったこと(これを債務不履行といいます。)により相手方に損害を生じさせた場合は、相手方に対して損害賠償義務を負います(民法416条)。

 ただ、この損害賠償責任は、当事者に予見可能な範囲の損害に対するものに限られます。

 ドラッグストアが、メーカーからヘアカラーを入荷し、きちんと保管して店頭に並べて販売したのであれば、頭皮がかぶれることは予見できないと思われますので、購入者はドラッグストアで購入した不良品のヘアカラーで頭皮がかぶれたことを理由に、ドラッグストアに治療費等を請求することはできないでしょう。

 しかし、ドラッグストアがヘアカラーをメーカーから入荷した後、ずさんな管理方法をとっていたような場合(たとえば高温になる場所に置いてはいけないと書いてある商品につき、これを守らなかったような場合)、ドラッグストアに購入者の頭皮のかぶれにつき予見可能性が認められる可能性があります。

 そして、そのような保管方法によりヘアカラーが劣化して新品のものとはいえない状態になっており、このようなヘアカラーの劣化が原因で購入者の頭皮がかぶれたのであれば、ドラッグストアは購入者に対して、債務不履行に基づく治療費の損害賠償義務を負うことになると思われます。

 また、購入者はドラッグストアに対し、ずさんな商品管理によって購入者に損害を与えたとして、不法行為に基づく損害賠償請求をすることも可能です。

 

 この場合、購入者のほうが、損害の発生についてドラッグストアに故意・過失があることを証明することになります。購入者が債務不履行に基づく損害賠償請求をするときは、ドラッグストアのほうが、自分に故意・過失がないことを証明することになるので、一般には購入者側としては債務不履行に基づく損害賠償請求をしたほうが有利だと言われています。

2. メーカーに対してはどんな請求ができるか。

 購入者とメーカーとの間には契約関係はありませんが、一般的に購入者はメーカーに対し、以下の責任追及が可能です。

A 製造物責任に基づく損害賠償請求
B 不法行為責任に基づく損害賠償請求

Bの責任追及をするためには、購入者が因果関係・故意・過失を証明しなければなりません。これは製造過程等についての情報がメーカーに偏在していることから通常は難しいでしょう。  一方、Aの責任については、購入者が製造物に欠陥があることを証明でき、その欠陥と損害との因果関係を証明できれば、認められます。

欠陥とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(製造物責任法2条2項)。

欠陥には

ア  製造上の欠陥:製造物が設計・仕様どおりに作られなかったために安全性を欠く場合
イ  設計上の欠陥:設計自体に問題がある場合
ウ  指示・警告上の欠陥:製品に除去し得ない危険性が存在する場合に、その適切な情報を消費者に与えない場合
があるといわれています。

 この欠陥は、製造物責任法の解釈上、メーカーの出荷時に存在していなければならないこととされています(同法3条参照)。
 したがって、購入者が、メーカーによるヘアカラーの出荷時に上記アないしウのいずれかの欠陥があることおよびその欠陥と治療費の支出との因果関係を証明できれば、治療費を損害としてメーカーに損害賠償請求が可能となるでしょう。

 ただし、実際には、化粧品が「通常有すべき安全性を欠くこと」、つまり欠陥の存在を立証することはなかなか難しいようです。これについては、化粧品を購入使用して顔面等に接触性皮膚炎を生じたとして、化粧品の製造会社、販売会社、小売会社を相手に、製造物責任法、不法行為又は債務不履行に基づき、治療費、慰謝料等の損害賠償を求めたところ、化粧品自体が通常有すべき安全性を欠いているとは認められず、化粧品の指示・警告に欠陥があったと認めることはできないとして、損害賠償請求権が否定された判例がありますので参考にしてください(東京地方裁判所判決 平成12年5月22日 判例時報1718号3項)。

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