不動産取引、知的財産から離婚・遺言・相続まで。
あらゆるお悩みに、各分野に精通した弁護士が迅速に対応いたします。
前回は、民事法上の時効制度の趣旨について検討しました。今回は、刑事法上の時効制度、とりわけ、公訴時効制度の趣旨と時効期間について検討することとします。
公訴時効制度の意義については,本レポート第1回でも記載したとおりです。これを裁判の各当事者から捉えれば,以下のような制度であるということができます。
(1) 捜査機関側からみれば、一定の期間内に公訴を提起しなければ、訴訟を適法に成立させることができなくなる制度。
(2) 裁判所側からみれば、公訴期間経過後に起訴された事件について実体判決、つまり有罪判決や無罪判決を言い渡すことができなくなる制度。
(3) 被告人・弁護人側から見れば、一定の期間内に公訴を提起されなければ、有罪判決を受けることがなくなる制度。
では、刑事法上、なぜこのような公訴時効制度は存在するのでしょうか。公訴時効制度の趣旨をどのように捉えるべきか。この点についても、民事法上の時効制度と同様、いろいろな角度からの検討がなされています。代表的な考え方としては、以下の3つの考え方があるといわれています。
(1) 実体法説
時の経過によって、犯罪に対する社会の応報や必罰感情などの社会的影響が微弱化し、一般人に対する刑の威嚇力や当該犯罪を行った者に対する再犯予防効果(特別予防力といいます。)が微弱となるという考え方。
(2) 訴訟法説
時の経過とともに証拠が散逸するため、有罪・無罪といった実体判決をすることができなくなることから、裁判所は、犯罪の存否を判断せずに訴訟を終了させる免訴判決(刑事訴訟法337条4号)をせざるを得ないという考え方。
(3) 競合説
上記2つの考え方を合わせた考え方。
これらの考え方をごらんになって、本レポートをごらんの皆さんはご納得できたでしょうか。時の経過によって処罰感情が微弱化するという点については、近時の社会情勢(とくに被害者保護に関する報道など)からすれば、異なる考え方もあることでしょう。
また、証拠の散逸という点については、DNA鑑定などの科学捜査技術の向上などもあり、ある程度の期間が経過した後に新しい証拠が発見されることもあり得ます。
このようなことから、上記のような議論は現在では必ずしも当てはまらないものになりつつあるといえます。そこで、以下のような新しい考え方も主張されています。
(1) 長期に渡って起訴されない状況が続いた事実状態を尊重し、併せて、証拠の散逸によって生じる誤判を防止するために,法が特に訴追を許さないとした制度である。
(2) 長期に渡って起訴されない状況が続いた事実状態について、国家権力の行使が抑制されるとの考え方。
このように公訴時効制度の趣旨をどのように捉えるかは、定まった1つの考え方があるとはいえない状況です。ただ、一定の期間の経過によって、証拠がある程度散逸してしまうことはやむを得ないところであり、また、遺憾ながら社会的関心も薄れてしまうことが少なくないということは否定できない社会的事実であるように思われます。
では、「一定期間」とはどの程度の期間をいうのでしょうか。それは、次回以降検討することとします。
☎047-325-7378
(平日9:30~17:30受付)
法律相談予約専用ダイヤル
0120-25-7378
(24時間受付、土日対応可)
「相談したいけど…」と迷われている方、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの不安や悩みを解決するお手伝いをいたします。