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研究レポート

5 公訴時効制度に関する法改正

著者:弁護士 丸島一浩

2010/6/7

1 「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」の成立

  先日,殺人罪などについて,公訴時効が廃止されたとの報道がなされました。刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(平成22年4月27日法律第26号,以下「刑訴法改正法」といいます。)が成立したことによります。

 刑訴法改正法の趣旨としては,「人を死亡させた犯罪に対する適正な公訴権の行使を図るため、これらの犯罪のうち、法定刑に死刑が定められているものについては公訴時効の対象から除外し、法定刑に懲役または禁錮が定められているものについては公訴時効期間を延長するもの」であるとの説明がなされています(平成22年4月27日衆議院本会議・法務委員会委員長による報告)。

 刑訴法改正法の特色としては,殺人罪などが公訴時効の対象外とされたことはもちろんですが,そのほかの特色として,次の2点が挙げられます。

2 特色(1)-公布の日から即日施行されたこと

  法律は,国会で議決され,その後公布され,そして施行されます。公布から施行までは,一定の期間が置かれるのが通常です。これは,法律の周知徹底をはかる必要があるとの配慮によるものです。
  たとえば,労働基準法の一部を改正する法律での規定の仕方と比較すると,刑訴法改正法の特色がはっきりするかと思います。

労働基準法附則(平成20年12月12日法律第89号)(施行期日)第1条
   この法律は、平成二十二年四月一日から施行する。

刑訴法改正法附則(施行期日)第1条
   この法律は、公布の日から施行する。(以下,省略)

3 特色(2)-施行日時点で公訴時効が完成していない一定の犯罪にも,刑訴法改正法の適用があること

  憲法39条前段では,「何人も,実行の時に適法であった行為又はすでに無罪とされた行為については,刑事上の責任を問われない。」と規定されています。このような考え方は,遡及処罰禁止の原則と呼ばれています。
  この規定の趣旨を踏まえ,労働基準法の一部を改正する法律では,罰則を規定する部分について,次のとおり規定しています。この規定により,改正前にした行為について,罰則を適用する場合には,改正前の法律等が適用されることになるのです。

   労働法附則(平成20年12月12日法律第89号)(罰則に関する経過措置)第2条
     この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。


  これに対し,刑訴法改正法では,次のとおり規定しています。この規定により,刑訴法改正法施行日時点で公訴時効が完成していない殺人罪等の罪については,改正刑事訴訟法の規定が適用されることになる結果,そのような罪については,公訴時効の制度の対象外とされ,「公訴時効の廃止」という効果が生じることになります。

刑訴法改正法附則(経過規則)第3条2項
新法第二百五十条第一項の規定(筆者注:公訴時効について改正した部分です)は、刑法等の一部を改正する法律(平成16年法律第156号)附則第3条第2項の規定にかかわらず、同法の施行前に犯した人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもので、この法律の施行の際その公訴の時効が完成していないものについても、適用する。

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