解決事例集
(弁護士には守秘義務があります。依頼者のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更しています。)
ケース1 長男の親権の帰属が問題となったケース
Aさん 30代前半 専業主婦
夫 30代前半 会社員
結婚2年 子供1歳
Aさんは、性格が合わない夫との離婚を希望し、長男を連れて実家に戻りました。
別居後も双方が長男の親権を主張し、話し合いが進まなかったので、Aさんは弁護士に依頼して離婚調停申立をすることにしました。
調停期日では、どちらが親権者になるかが争いになっていることから、調停委員2名のほか、家庭裁判所調査官が同席していました。
夫は、自分が長男の親権者となるのでなければ離婚しない、長男と一日も早く面会したい、などと主張しました。
Aさんは、当初、長男と夫の面会について消極的でしたが、弁護士及び調停委員・調査官から、父親との面会が子の成長に良い影響を与える旨の説明を受け、夫がルールを守ってくれるのであれば認めてもよい、というように気持ちが変化してきました。
調停期日間に長男と夫の面会を行ったことで、夫も離婚について前向きに考えられるようになり、面会後に行われた調停では、夫から「月に1回以上の面会が認められるのであれば離婚に応じてよい」、という提案がありました。
Aさんも月1回以上の面会に同意し、養育費については算定表通りの金額を支払うことで、離婚が成立しました。
【ポイント】
親権者を父母のどちらにするかについて対立があったケースですが、面会に関してきちんとルールを定め、面会を認めていくことで、夫側の譲歩を引き出すことができ、無事離婚の合意に達することができました。
ケース2 退職金の分与が問題となったケース
Bさん 50代 主婦
夫 50代 会社員
Bさんは、浪費家で借金を重ねる夫との離婚を希望していました。
夫は、近々勤務先の会社を早期退職し、ある程度のまとまった退職金を受け取る予定でした。
夫に退職金が支払われた場合、借金の返済に充てられてしまう可能性がありました。
そこで、直ちに弁護士会照会制度を利用して退職金の詳細に関する調査を行い、夫に支払われる退職金の額、支払時期などの情報を得ました。
調査内容をもとに、裁判所に対して退職金債権の仮差押の申立をしました。原則は退職金の4分の1までの差し押さえしか認められないところ、裁判所に対し、差押の範囲を広げてもらうよう申立てを行い、退職金の半分にあたる金額までの仮差押を認めてもらいました。
その結果、その後の離婚交渉を有利に進めることができました。
【ポイント】
離婚にあたり、夫婦の一方が受け取る退職金が財産分与の対象となる場合があります。しかし、支給された退職金が借金の返済などに使われてしまったり、現金にして隠されてしまったりした場合、後に財産分与を認める判決を得ても、取り立てをすることが困難になってしまいます。
このケースでは、早期に仮差押の申し立てをすることで、退職金を確保することができました。
ケース3 夫に2歳児の子の親権が与えられた事例
離婚及び2歳児の子の親権をめぐって夫婦間で争いが生じました。この件に関しまして、当事務所では、夫側の代理人となりました。
子の親権を夫と定める内容で調停が成立しました。
【ポイント】
通常、未熟な子がいる場合には、母の存在が子にとって必要であるという考えから、親権は母親に与えられることが多いです。
もっとも、このケースでは、妻は婚姻前から精神的病を疾患しており、精神的に不安定な状態でありました。そこで、子を育てる環境としては、妻より夫のほうがふさわしいという結論に至り、子の親権を夫と定める内容で調停が成立しました。
ケース4 面会交流に関し間接強制が認められた事例
妻が子供を連れて家を出てしまい、離婚を求められた男性からのご相談でした。 男性が子供との面会を求めたところ、妻から拒否されているとのことで、調停を起こしました。 調停でもまとまらず、審判により面会回数、方法が定められましたが、これにも妻は従わず、やむを得ず間接強制を申し立てました。
家庭裁判所の期日に、妻も出席し意見を述べましたが、裁判所は、面会を1回拒むごとに1万5000円の支払いを命じる決定を出しました。
【ポイント】
決定が出ても、面会を強制的に実現できるものではありませんが、面会交流の実現に向けての一方策としては有効な手段であると考えます。
ですが、本来であれば、この申立て・決定に至る前に、面会交流のルール作り、履行がなされるような環境を作ることが理想です。
ケース5 別居中の婚姻費用を請求した事例
夫の暴言から逃れたい一心で、妻が子どもを連れて別居をしましたが、妻は無職であり経済状況は厳しく、すぐには離婚を考えられない状況でした。
夫が別居中の生活費を支払う内容の調停が成立しました。
【ポイント】
このケースでは、妻が無職であり収入がなく、夫には別居中の婚姻費用(生活費)を支払う義務があります。しかし、別居後に婚姻費用の支払いを求めても、別居に至る経緯から感情的対立が激しくなっていることが多いため、実際に支払ってもらうのは難しいものです。
そこで、速やかに婚姻費用分担調停の申し立てを行うことにし、調停期日で婚姻費用の金額について話し合いを行ったところ、夫が別居中の生活費を支払う旨の調停を成立させることができました。
ケース6 有責配偶者からの離婚請求を退けた事例
高校生の長女と夫婦で3人暮らしのご家庭でした。 夫が突然家を出て、隣の市の女性の家に住み始めました。 その後、夫から離婚の調停を申し立てられました。
ご相談者は長女が大学受験を控え、学費の心配もあることから離婚はしたくないと考えていました。
夫は女性の家を借りているだけなので不貞はしていない、シェアハウスであるなどと有責配偶者であることを否定していました。
夫が申し立てた調停は不成立に終わり、夫が裁判を起こしました。
夫は同居中からの婚姻関係の破たんを主張していましたが、当方は最高裁判例を踏まえ未成熟子である高校生の娘がいることを主張し、丁寧に夫と女性の関係を調査し不貞行為を推認させる証拠を裁判所に提出しました。
裁判所は夫の離婚の請求を認めませんでした。
夫側は控訴しましたが、夫の主張は高裁でも認められませんでした。
【ポイント】
今回のケースは、女性宅に夫が住んでいるにもかかわらず、夫側が不貞関係を強く否定していましたが、訴訟段階で妻側に有利な証拠を見つけ、裁判所に提出することができました。
あきらめずに調査を継続することも重要です。
ケース7 夫の不貞相手に対して慰謝料請求をした事例
夫がご相談者の留守中に自宅で女性と会っていたことをご相談者がとがめたため、夫が家を出ました。
女性側も家庭があり、夫と同じ会社の同僚でした。
ご相談者は女性に慰謝料を請求したいと相談にいらっしゃいました。
不貞の証拠としては女性からの手紙などしかなく、決定的な証拠は乏しかったため、訴訟前に女性と話し合いの機会を持とうとしました。
しかし、女性が話し合いに応じないため、訴訟を提起しました。
裁判官から和解の勧告があり、手紙の内容などから、女性が慰謝料を支払う旨の和解が成立しました。
【ポイント】
今回のケースは手紙の内容から裁判官も不貞があるという印象を受けたようで、早期に和解の勧告がなされ、相手の女性も和解を受け入れました
ケース8 夫が行方不明の場合の離婚請求
ご相談者の夫は数年前に家出をしてから行方が分からなくなりました。
ご相談者はもう離婚をしたいということで相談にみえられました。
行方不明の場合、調停を申し立てても相手方は出頭できません。
調停を申し立てず、離婚訴訟を提起し、無事に離婚の判決を得ることができました。
【ポイント】
配偶者が行方不明である場合には、実際に相手方を呼び出して話し合いをすることができません。
調停申立てを行わなくとも、訴訟を起こすことができます。
ケース9 協議離婚の際に公正証書を作成して慰謝料・財産分与・養育費の支払い、年金分割の割合を決めた事例
未成年のお子さんがいるご夫婦の離婚のケースです。
すでに離婚すること、慰謝料の支払い・財産分与・養育費・年金分割については話し合いがついていましたが、将来の支払いが不安だったため、妻側から公正証書を作成したいというご相談がありました。
妻側から公正証書作成のための事情を伺い、また、夫側に内容を確認してもらったうえ、公証役場と連絡を取りながら、公正証書の原案をまとめました。
【ポイント】
公証役場には当初ご夫婦本人がいくことになりましたが、妻側の依頼を受け、公証役場まで同行しました。妻側のサポートをすることで、妻側も安心して手続きを終えることができました。