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研究レポート

12 所有者不明土地について

著者:弁護士 宮本勇人

2017/12/18
(改訂)2018/4/20
(改訂)2018/6/21
(改訂) 2019/5/9
(改訂)2019/11/21
(改訂)2021/3/17
(追記)2021/8/2

 所有者不明土地とは、文字通り所有者が「不明」な土地という意味ではなく、不動産登記簿等の土地所有者台帳により、所有者が「直ちに判明しない、または判明しても所有者に連絡がつかない」土地のことです(国道交通省の検討部会の定義による)。

 このような土地が発生する原因はいろいろありますが、一つの原因として土地について相続が発生しても登記を行う義務が必ずしもないことによります。登記をするには、手間も費用も掛かりますので、土地を処分するなど土地について登記をする理由がない場合は、名義はそのままになっていることが多いのです。

 また、地方によっては、一定の地域の住人が何らかの理由から土地を複数で共有していることがあり、時間の経過とともに、その共有者との連絡がつかなくなることも原因の一つです。このような共有地に、相続が発生すると、権利者が百人を超えることも珍しくなく、事実上その土地を処分することは不可能になってしまいます。

 このような土地は、日本全国でも多数発生しており、公共事業を行うのに支障になるなど、多くの問題を起こしています。
 このような状況のもと、所有者不明土地の利用円滑化等に関する特別措置法(以下「特措法」という)が平成30年6月6日に成立し、同月13日に公布されました。

その法律案の概要としては

(1)所有者不明土地を円滑に利用する仕組み

 反対する権利者がおらず、建築物(簡易な構造で小規模なものを除く。)がなく、現に利用されていない所有者不明土地について、以下の仕組みを構築。

  • ○公共事業における収用手続の合理化・円滑化(所有権の取得)
     国、都道府県知事が事業認定した事業について、収用委員会に代わり都道府県知事が裁定
  • ○地域福利増進事業の創設(利用権の設定)
      地域住民等の福祉・利便の増進に資する事業について、都道府県知事が公益性を確認し、一定期間の公告に付した上で、利用権(上限10年間)を設定(所有者が現れ明渡しを求めた場合は、期間終了後に原状回復、異議がない場合は延長可能)

(2)所有者の探索を合理化する仕組み

  • ○土地の所有者の探索のために必要な公的情報について、行政機関が利用できる制度を創設
  • ○長期間、相続登記等がされていない土地について、登記官が、長期相続登記等未了土地である旨等を登記簿に記録すること等ができる制度を創設

 具体的には、特措法は、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がなされていない土地であって、公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記名義人となりうる者を探索する必要があるものを「特定登記未了土地」と定義し、その中でも、当該土地の所有権の登記名義人の死亡後30年間を超えて相続による所有権の移転の登記等がなされていない土地を「長期相続登記等未了土地」と呼び、この土地について相続登記を促し、不動産登記が現状と一致するようにする新たな施策が実施されることとなった。

 住民基本台帳法等の改正により、令和元年6月20日から住民票の除票及び戸籍の附票の保存期間が5年から150年に延長されました。不動産登記簿では、所有者の特定は住所と氏名のみでなされるため、探索には住所情報が重要ですが、従来は、住民票の除票及び戸籍の附票の除票については、5年を超えた保存は法的に義務付けられておらず、核家族化や単身独身化が進んでいる現在、5年の保存期間では転居履歴を追えず、土地所有者が不明になってしまうことがありましたが、今後はこのようなことは解消されるでしょう。また、境界の立ち合いを求める場合にも、同様に立会人の探索が可能となるでしょう。

(3)所有者不明土地を適切に管理する仕組み

  •  ○所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等を請求可能にする制度を創設

 所有不明の土地は、今後も増加することは明らかであり、将来的には立法による根本的な解決が必要でしょう。特に、民間による利用拡大を進めるための施策が必要になります。
 ちなみに、法務省が全国10万筆の土地を対象として不動産登記簿における相続登記未了土地調査を実施し、その結果を平成29年6月に公表しました。それによると、最後に所有権の登記がされてから50年以上経過しているものが、大都市地域において6.6%、中小都市・中山間地域において26.6%となっていることが判明しました。

 国土交通省と法務省は所有者不明土地について、一部の所有者によって売却や賃貸ができる仕組みを検討し、令和2年の通常国会に関連法改正案の提出を目指すとのことです。共有となっている土地は、民法の原則によると全員の同意が必要とされますが、不明共有者の持ち分については共有者が金銭を法務局に供託することで共有持ち分を取得し共有関係を解消することができます。また、土地を賃貸するには共有持ち分の過半数を持っている共有者の同意が必要ですが、改正案では賃貸や盛り土などの整備について、不明となっている共有者以外の残りの共有者の同意で可能にするとなっています。

(4)相続土地国庫帰属制度

 令和3年4月「相続により取得した土地の所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。
 相続した土地を最終的に国が引き取る制度ですが、条件が厳しく利用できるケースが限られるのではないかと懸念されます。

問題となる要件としては
・土地上に建物が存在していないこと
・土地の境界が明らかであり所有権について争いがないこと
・土地が共有の時は、全員の同意が必要
・土壌汚染がなく、地下に埋設物がないこと
・10年分の管理費用を負担金として納付しなければならない

等があり、このままでの制度では従来のように相続放棄により処理されることになるのではないかと考えられます。
そもそも、問題のない土地であれば、価格を下げれば引き取り手が現れるのが実際なので、引き取り手を見つけるのが困難な不動産について相続土地国庫帰属制度がどこまで役に立つかは施行5年後の見直しによって再検討されることになると思われます。

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