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研究レポート

11 民事再生と担保権

著者:弁護士 和田はる子

2010/11/10

Q

 民事再生手続が開始されると債務者の財産に設定された担保権はどうなるか?

1 別除権となる担保権

 担保権は、債務者の資力が不足したときでも優先的に弁済を受けられるよう設定するものですから、民事再生手続が開始された場合でも、債権者のその期待はある程度保護されます。
債務者の財産に設定されたほとんどの担保権は、民事再生手続が開始されると、再生手続上「別除権」と呼ばれる優先弁済権のある権利になります。
 「ほとんどの担保権」と書いたのは、民事留置権など、別除権として認められない担保権もあるためですが、以下の担保権は別除権として扱われることになります。
 抵当権・特別の先取特権・質権・商事留置権・譲渡担保権・所有権留保

2 第三者対抗要件の必要性

 上記担保権でも、抵当権の場合は登記、譲渡担保権の場合は引渡しなど、他の債権者に担保権の存在を主張できる第三者対抗要件を備えていなければ、再生手続上別除権であることを主張できません。
抵当権設定契約は締結済みだが何らかの事情で登記未了という場合、抵当権者は、民事再生手続においてその抵当権を別除権として権利行使することができず、抵当権の被担保債権は一般の再生債権と同様に扱われることになります。

3 別除権の権利行使

 別除権となる担保権(第三者対抗要件を備えたもの)は、再生手続が開始されても、自由に実行できるのが原則です。抵当権であれば、競売手続を進めることができますし、譲渡担保であれば、目的物を売却して売却代金を取得することができます。
 そして、担保権を実行しても満足されなかった債権額部分(担保不足額)は、一般の再生債権と同様に扱われることになります。
 つまり、担保権者は、担保権の実行によって満足を受ける担保目的物の価額部分について優先弁済を受ける権利があり、担保目的物の価額を超える部分(所謂オーバーローン部分)については、一般の再生債権と平等に扱われて債権カットされることになるのです。


4 別除権協定

 3の原理を使って、実際には担保権を実行せず、担保目的物の価額に相当する額を債務者が担保権者に支払うことによって担保権を消滅させ、その支払いが終わるまでは担保権の実行を猶予するという協定(契約)が、担保権者と債務者の間で締結されることもあります。これを別除権協定といいます。
 工場に設定された抵当権、商品や原材料に設定された集合動産譲渡担保など、事業活動に必要な物に担保が設定されている場合は、担保権の実行を回避するため別除権協定の締結に向けて債務者が担保権者と協議を行います。
もっとも、再生手続を申し立てた債務者には、資金提供してくれるスポンサーがあるような場合を除いて、担保物の価額を一括で支払う余裕などないのが通常ですから、別除権協定における担保目的物の価額の弁済は、10年以内程度の分割払いとなることが多いようです。


5 担保権消滅手続

 担保目的物が債務者の事業に必要不可欠な物である場合は、民事再生法で設けられている担保権消滅手続を利用することもできます。
これは、担保目的物の価額に相当する金銭を裁判所に納付して担保権を消滅させる手続です。しかし、裁判所への金銭納付は一括でなくてはならないため、その資金を用意することのできない債務者は利用することができません。


6 別除権付再生債権の権利行使

 担保の被担保債権、つまり、別除権付再生債権は、担保権の実行によって満足を受けることのできない部分(担保不足額)が確定した後でないと、残りの額について再生債権としての弁済を受けることはできません。
 不足額の確定は、担保権の実行のほか、別除権協定によってもされます。

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