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研究レポート

16-1 民事再生手続きと相殺

著者:弁護士 和田はる子

2011/8/8
(改訂)2012/6/12

Q

 民事再生手続きでは相殺が制限されることがあるということですが、どのような場合ですか。

1 相殺制限について

 相殺は、当事者間で対立する債権を対当額で消滅させる制度なので、一方のみが弁済して他方が弁済を受けられないという事態を防ぐことができ、平時においては、当事者間の平等確保に役立つ制度だといえます。
 しかし、民事再生手続きを申し立てた債務者は、支払能力が著しく低下していますから、再生債務者に対する再生債権の価値は名目上の額よりかなり低くなっています。その価値の低くなっている再生債権と、再生債務者の有する債権(再生債権者の債務)を相殺すると、価値の異なる債権同士で相殺をすることになります。そこで、民事再生手続きでは、相殺について、一定の制限が設けられています。
 ただ、互いに対立する債権を保有している者同士は、いつでも相殺してその範囲内で債権回収できると期待しており、その期待も合理的な範囲で保護する必要があるので、相殺が制限されるのは、合理的な期待がないと考えられる下記2のような場合です。

2 債権者からする相殺が許されない場合

 次の(1)(2)の①~④のようなときは、(3)の例外を除いて、債権者の方から、再生債権と再生債務者の有する債権を相殺することはできません。
 相殺が制限されるのは、いずれも、債権者が、両債権に価値的均衡がないことを知りながら相殺できる状態を作ったときだということができます。価値的均衡がないことを知らないまま相殺の担保的機能を期待して取引をしていた場合は、民事再生手続きが開始されても、その期待は保護されると考えてよいので、安心してください。

(1) 再生債務者に対する債務負担時期による制限
 ① 再生手続開始後に再生債務者に対して債務を負担したとき
 ② 再生債務者が支払不能になった後に、それを知りながら、相殺目的で再生債務者から財産を譲り受けたり、
   再生債務者に対する債務を債務引受したとき
 ③ 再生債務者の支払停止後に、それを知りながら債務を負担したとき
 ④ 再生手続き・破産手続き・特別清算手続き開始の申立て後に、その事実を知りながら債務を負担したとき

(2)再生債権の取得時期による制限
 ① 再生手続開始後に他人の再生債権を取得したとき
 ② 再生債務者が支払不能になった後に、その事実を知って再生債権を取得したとき
 ③ 再生債務者の支払停止後に、その事実を知りながら再生債権を取得したとき
 ④ 再生手続開始申立後に、その事実を知りながら再生債権を取得したとき

(3)(1)②~④に該当しても、債務の取得が次の①~③に基づくときは、相殺することができます。
同様に、(2)②~④に該当しても、債務の取得が次の①~④に基づくときは、相殺することができます。
(1)①、(2)①の場合は、次の①~④に基づくときでも相殺することはできません。

 ① 法定の原因
 ② 支払不能・支払停止・再生手続開始申立てを債権者が知る前の原因
 ③ 再生手続開始申立てがあったときより1年以上前に生じた原因
 ④ 再生債務者に対し債務を負担する者と再生債務者との間の契約

3 相殺の時的制限

 上記のような相殺制限にかからず債権者からの相殺が許される場合でも、民事再生手続きでは、債権者から相殺できる期間が、債権届出期間内に限られます(それ以後の相殺は、再生計画の策定に影響を及ぼす可能性があるため)。
 債権届出期間が経過した後で、「再生債務者に対する債務があったので、届け出た再生債権と相殺する。」と主張することはできませんので、注意してください。

4 共益債権、一般優先債権による相殺

 共益債権や一般優先債権と、再生債務者の有する債権(共益債権者・一般優先債権者の再生債務者に対する債務)を相殺することについては、特に制限がありません。
 民事再生手続中、いつでも通常どおり相殺できます。

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