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研究レポート

8 ロボットの輸入差止め

著者:弁護士・弁理士 南部朋子

Q

当社は掃除用ロボットを開発し、米国での掃除ロボットの需要を考慮して米国の住宅、オフィス向けの仕様とし、4年前に米国に輸出を始めました。好調な売上げを達成しており、現在では米国内では広く知られる製品に成長しました。そこで、1年前から当社の掃除ロボットを日本国内でも販売し、当社ロボットはテレビや雑誌などマスコミで取り上げられるほどの大ヒット商品となっております。
ところが、最近になって、当社の掃除ロボットとほぼ同じ商品名、形態、パッケージの掃除ロボットが日本で販売されていることがわかりました。当社が調査したところ、当社の掃除ロボットの類似品が、遅くとも1か月くらい前からA社によって米国から輸入されているようです。
A社の掃除ロボットが日本で販売されることにより、今後当社の売上げが減少するおそれがあります。
A社の掃除ロボットの輸入を税関で止めることはできないでしょうか。

なお、当社は掃除ロボットについて、いまのところ特許権、実用新案権、商標権、意匠権などの設定登録は受けていません。

A社の輸入行為は、不正競争防止法2条1項1号(周知表示混同惹起行為)、あるいは同条1項3号(形態模倣)に該当することが考えられます。

この場合、御社は同法3条1項に基づいてA社の輸入を差止めることができます。 では、不正競争行為であることを理由に、A社の掃除ロボットの輸入を、裁判所の判断を待つことなく税関で止めることはできるでしょうか。
残念ながら、平成17年8月現在においては、A社の掃除ロボットにつき、税関において輸入を差止めることはできないでしょう。

ただ、平成17年3月30日に成立した「関税定率法等の一部を改正する法律」により、関税定率法が改正され、同法第21条1項に規定される輸入禁制品に、「不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号までに掲げる行為を組成する物品」が加えられました(改正後の関税定率法第21条1項10号をして追加され、平成18年3月1日から施行されます)。
A社が輸入する掃除ロボットは、(改正後の)関税定率法第21条1項10号の輸入禁制品に当たるとして税関で輸入を差止められる可能性があります。 税関長は、同法第10号の輸入禁制品を没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができます(同法第21条2項)。
ただし、税関長は、同法第21条4項の認定手続(当該貨物が不正競争防止法第2条1号から3号までに掲げる行為を組成するかどうかの認定をする手続)を経た後でなければ、関税法第六章に従って輸入されようとする貨物について、没収・廃棄しまたは輸入しようとする者に積戻しを命じることができません(同法第21条7項)。
御社は、同法第21条の2第1項に基づき、税関長に対し、当該貨物(掃除ロボット)について輸入差止申立書を提出することにより、同法第21条4項の認定手続を申し立てることができます。
認定手続の結果、A社の輸入しようとしている掃除ロボットが不正競争防止法2条1項1号、あるいは同条1項3号を組成するもの、すなわち輸入禁制品と認定されれば、当該掃除ロボットは税関長によって没収・廃棄され、あるいはA社が積戻しを命じられて、日本に輸入できないことになります。
輸入差止手続については、詳しくは、http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/index.htmlをご覧下さい。

関税定率法第21条及び第21条の2の条文(予定)を以下に引用します
※「関税定率法等の一部を改正する法律(平成17年3月31日法律第22号)」附則第1条2号により、平成18年3月1日から施行されます。

(輸入禁制品)
第二十一条  次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
[一号ないし九号略]
十  不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第一項第一号から第三号まで(定義)に掲げる行為(これらの号に掲げる不正競争の区分に応じて同法第十九号第一項第一号から第五号まで(適用除外等)に定める行為を除く。)を組成する物品
2  税関長は、前項第一号から第六号まで、第九号又は十号に掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる。
3  税関長は、関税法第六章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに第一項第七号又は第八号に掲げる貨物に該当すると認めるのに相当の理由がある貨物があるときは、当該貨物を輸入しようとする者に対し、その旨を通知しなければならない。
4  税関長は、関税法第六章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当する貨物があると思料するときは、政令で定めるところにより、当該貨物がこれらの号に掲げる貨物に該当するか否かを認定するための手続(以下この条から第二十一条の五までにおいて「認定手続」という。)を執らなければならない。この場合において、税関長は、政令で定めるところにより、当該貨物に係る特許権者等(特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者、回路配置利用権者若しくは育成者権者又は不正競争差止請求権者(第一項第十号に掲げる貨物に係る同号に規定する行為による営業上の利益の侵害について不正競争防止法第三条第一項(差止請求権)の規定により停止又は予防を請求することができる者をいう。以下同じ。)をいう。以下この条において同じ。)及び当該貨物を輸入しようとする者に対し、当該貨物について認定手続を執る旨並びに当該貨物が第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当するか否かについてこれらの者が証拠を提出し、及び意見を述べることができる旨その他の政令で定める事項を通知しなければならない。
5  税関長は、前項の規定による通知を行う場合には、当該貨物に係る特許権者等に対しては当該貨物を輸入しようとする者及び当該貨物の仕出人の氏名又は名称及び住所を、当該貨物を輸入しようとする者に対しては当該特許権者等の氏名又は名称及び住所を、併せて通知するものとする。
6  税関長は、第四項の認定手続が執られる貨物の輸入に係る関税法第六十七条(輸出又は輸入の許可)の規定に基づく輸入申告書その他の税関長に提出された書類、当該認定手続において税関長に提出された書類又は当該貨物における表示から、当該貨物を生産した者の氏名若しくは名称又は住所が明らかであると認める場合には、同項の通知と併せて、又は当該通知の後で当該認定手続が執られている間、その氏名若しくは名称又は住所を当該貨物に係る特許権者等に通知するものとする。
7  税関長は、第四項の認定手続を経た後でなければ、関税法第六章に定めるところに従い輸入されようとする貨物について第二項の措置をとることができない。
8  税関長は、第四項の認定手続が執られた貨物(以下「疑義貨物」という。)が第一項第九号又は第十号に掲げる貨物に該当すると認定したとき、又は該当しないと認定したときは、それぞれの旨及びその理由を当該認定がされた貨物に係る特許権者等及び当該認定がされた貨物を輸入しようとする者に通知しなければならない。ただし、次項の規定による通知をした場合は、この限りではない。
9  税関長は、前項本文の規定による疑義貨物に係る認定の通知をする前に次の各号に掲げる場合のいずれかに該当することとなつたときは、当該疑義貨物に係る特許権者等に対し、その旨を通知するとともに、第四項の認定手続を取りやめるものとする。
一  関税法第三十四条(外国貨物の廃棄)の規定により当該疑義貨物が廃棄された場合
二  関税法第四十五条第一項 ただし書(保税蔵置場の許可を受けた者の関税の納付義務の免除)(同法第三十六条(許可を受けて保税地域外に置く外国貨物)、第四十一条の三(保税蔵置場についての規定の準用)、第六十二条(保税工場)、第六十二条の七(保税展示場)及び第六十二条の十五(総合保税地域)において準用する場合を含む。)の規定により当該疑義貨物が滅却された場合
三  関税法第七十五条(外国貨物の積戻し)の規定により当該疑義貨物が積み戻された場合
四  前三号に掲げる場合のほか、当該疑義貨物が輸入されないこととなつた場合
10  第五項若しくは第六項の規定による通知を受けた者又は第二十一条の三の二第二項の規定により承認を受けた同項に規定する申請者は、当該通知を受けた事項又は当該申請に係る見本の検査(分解を含む。同条において同じ。)その他当該見本の取扱いにおいて知り得た事項を、みだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。

(輸入禁制品に係る申立て手続等)
第二十一条の二  特許権者、実用新案権者、意匠権者、商標権者、著作権者、著作隣接権者若しくは育成者権者又は不正競争差止請求権者は、自己の特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権若しくは育成者権又は営業上の利益を侵害すると認める貨物に関し、政令で定めるところにより、税関長に対し、その侵害の事実を疎明するために必要な証拠を提出し、当該貨物が関税法第六章に定めるところに従い輸入されようとする場合は当該貨物について前条第四項の認定手続を執るべきことを申し立てることができる。この場合において、不正競争差止請求権者は、不正競争防止法第二条第一項第一号(定義)に規定する商品等表示であつて当該不正競争差止請求権者に係るものが需要者の間に広く認識されているものであることその他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の意見を求め、その意見が記載された書面を税関長に提出しなければならない。
2  税関長は、前項の規定による申立てがあつた場合において、当該申立てに係る侵害の事実を疎明するに足りる証拠がないと認めるときは、当該申立てを受理しないことができる。
3  税関長は、第一項の規定による申立てがあつた場合において、当該申立てを受理したときはその旨及び当該申立てが効力を有する期間(税関長がその期間中に関税法第六章に定めるところに従い輸入されようとする貨物のうちに当該申立てに係る貨物があると認めるときは、その都度、当該申立てに基づき前条第四項の認定手続を執ることとなる期間をいう。)を、前項の規定により当該申立てを受理しなかつたときはその旨及びその理由を当該申立てをした者に通知しなければならない。
4  税関長は、第一項の規定による申立てを受理した場合において、当該申立てに係る貨物について前条第四項の認定手続を執つたときは、政令で定めるところにより、当該申立てをした者又は当該貨物を輸入しようとするものに対し、それぞれの申請により、当該貨物を点検する機会を与えなければならない。ただし、同条第九項の規定により当該認定手続を取りやめたときは、この限りではない。

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