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研究レポート

16 退職後に懲戒事由が発覚した場合の扱い

著者:弁護士法人リバーシティ法律事務所

2011/2/21
2012/3/7(改訂)
2014/7/16(改訂)

Q

 本人都合で退職したあとに、当人が会社の金を200万円横領していたことが発覚しました。横領は当社の就業規則の懲戒解雇事由にあたり、当社の退職金規定には、「懲戒解雇事由がある場合には退職金を自己都合退職金の2分の1の乗率とする。」旨の規定があります。すでに自己都合の場合の退職金を支払ってしまっていますが、どうしたらよいですか。

払い過ぎになっている退職金の返還を求めましょう。

 退職した人について、懲戒事由があったとしても、退職している以上、懲戒処分をすることはできません。
 したがって、「懲戒解雇の場合には、退職金は支給しない。」という規定であった場合には、「懲戒解雇」ができない以上、この条項を根拠に、退職金を不支給にすることはできないのが原則です。
 もっとも、在職中に背信的な行状があった場合、その発覚が退職後であっても、背信性の程度次第では、退職金請求権を行使することが権利の濫用にあたると判断した裁判例があり(東京地裁平成12年12月18日判決(労働判例803号74頁)、大阪地方裁判所平成21年3月30日(労働判例987号60頁))、場合によっては退職金の支払いを拒むことができます。

 退職金規定には、「懲戒事由がある場合には減額あるいは不支給とする。」との規定が置かれていることがあるようです。
 退職金には、賃金の後払い的性格と功労報償的な性格の2つの側面があり、このような退職金規定となっている企業において、懲戒事由がある場合に退職金を全額不支給とできるのは、これまでの勤続の功労を抹消ないし減殺してしまう程度の著しく信義に反する行為があった場合に限られるというのが、これまでの裁判例の傾向です。
 このため、退職金全額の不支給が認められるかは、発覚した事由が、これまでの勤続の功労を抹消ないし減殺してしまうようなものであるかどうかによることになります。

 今回の事例の場合、懲戒解雇事由がある場合には、退職金は自己都合退職金の2分の1しか発生しないということになりますので、退職金は払い過ぎになっているということになります。
 したがって、払い過ぎになっている退職金について、民法703条、704条に基づいて、返還を求めていくということになります。
 なお、「退職後、在職中の職務に関し、懲戒解雇事由に該当する事実が判明した場合には、すでに支給した退職金を返還させる。」との規定を置き、返還請求権を明確にしておくことも有効な手段といえます。

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