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研究レポート

4 解雇について

著者:弁護士法人リバーシティ法律事務所

2008/6/20

1. 総論

平成20年3月1日に施行された労働契約法6条には、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と定められている。 平成20年1月23日付け基発第0123004号「労働契約法の施行について」という厚生労働省労働基準局長の通達(以下「平成20年1月23日付通達」という。)によると、民法623条の「雇用」は、労働契約に該当することが確認されており、また、請負や委任などであっても、契約形式にとらわれず実態として使用従属関係が認められ、その契約によって労務を提供するものが労働契約法2条1項の「労働者」に該当する場合には、その契約は労働契約に該当するとされる。

2. 解雇に関する法規制

(1)民法
民法は、雇用契約の解約、解除について、以下のように定めている。

まず、期間の定めのない雇用契約の場合には、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、解約申入れから2週間経過すると、雇用契約は終了する(627条1項)。この場合、期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは次期以後について行うことができ、解約申入れを行う期の前半に行う必要がある(同条2項、3項)。
次に、期間の定めのある雇用契約の場合には、各当事者はやむを得ない事由があるときには直ちに契約の解除ができるが、この事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に生じた損害を賠償しなければならない(628条)。
なお、期間の定めがある場合であっても、雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後であれば、3ヶ月前に予告をすることで、いつでも契約の解除をすることができる(同626条1項本文、同2項)。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、十年とされる(同条1項但書)。

(2)労働契約法

民法では、当事者が対等な立場で雇用契約を締結することを前提とした規定となっているが、多くの判例によって使用者からの解雇を制限する解雇法理が形成されていった。
それを受け、平成15年、労働基準法18条の2として、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」との定めが置かれた。
労働基準法18条の2は、労働契約法の成立により労働基準法から削除され、同内容の規定が労働契約法16条として定められた。
平成20年1月23日付通達により、労働契約法16条は、「最高裁判所判決で確立しているいわゆる解雇権濫用法理を規定し」たものであり、「改正前の労働基準法18条の2と同内容である」ことが明らかにされている。

労働契約法16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働契約法では、有期契約労働者の解雇について、新たな定めを置いている。
前記(1)イのとおり、民法628条は、「やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。」と定めている。
この規定では、「やむを得ない事由があるとき」以外の場合は明らかではなかったところから、労働契約法17条1項は、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と定め、期間途中での解雇は原則としてできないことを明らかにした。
平成20年1月23日付通達によると、この「やむを得ない事由」とは、労働契約法16条にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められる場合よりも狭いと解されている。

(3)労働基準法

労働基準法は、労働者保護のために制定された法である。
そのため、使用者に解雇権が認められる場合であっても、労働者保護の観点から、種々の規制が定められている。
まず、使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に解雇予告をするか、あるいは、予告をしない場合には、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(同法20条1項本文)。予告の代わりに支払われる30日分以上の平均賃金は、予告手当と呼ばれることもある。本稿でも予告手当という。
前記(1)アのとおり、民法上は2週間前の予告で足りるが、労働者の保護の観点からこれを伸長したものである。
なお、解雇予告、予告手当のいずれもない場合、解雇が有効かどうかということが問題となるが、最高裁判所は使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間を経過するか、予告手当を支払ったときから当該解雇の効力が生ずると判断している(最高裁判所昭和35年3月11日第二小法廷判決 民集14巻3号403頁)。
次に、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が労働基準法65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない(労働基準法19条1項本文)。
これは、労働者が業務上の負傷や疾病の療養のための休業、産前産後の休業を安心してなしうるようにしたものである。

また、使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として解雇することはできない。労働基準法3条は、「労働条件について、差別的な取り扱いをしてはならない。」と定めており、解雇は労働条件にあたるとされている。したがって、国籍等を理由とする解雇はできないことになる。
なお、「雇い入れ(採用)」は、同条にいう労働条件にあたらないとされており、最高裁判所も同様の判断を示している(最高裁判所昭和48年12月12日大法廷判決 民集27巻11号1536頁)。

(4)労働組合法
労働組合法では、労働組合の組合員であること、正当な組合活動をしたことなどを理由とする不利益取り扱いを禁じている(同法7条1号および4号)。

(5)その他の法律
その他、公益通報者保護法などの種々の法律において、解雇を制限する規定が置かれている。

3. 解雇手続

解雇にあたって、よく問題となる点をいくつか列挙する。
(1)懲戒解雇と解雇予告
懲戒解雇の場合には、解雇予告ないし予告手当の支払いは不要であると考えられている。 労働基準法20条1項但書は、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」としており、解雇予告ないし予告手当の支払いは不要であるとしている。 就業規則に定めのある懲戒事由に該当する場合には、「労働者の責に帰すべき事由」となると考えられるので、解雇予告ないし予告手当の支払いは不要となると考えられる。 ただし、「労働者の責に帰すべき事由」については、行政官庁(労働基準監督署)の認定を受ける必要がある(労働基準法20条3項、19条2項)。

(2)解雇事由
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、解雇は権利濫用として無効となる。
すなわち、解雇するには、客観的に合理的な理由があり、かつ、その理由からすると社会通念上解雇もやむを得ないと認められることが必要である。
懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒の定めがあることが必要であるとの最高裁判所の判断(最高裁判所平成15年10月10日第二小法廷判決 判例タイムズ1138号71頁)があることから、懲戒解雇を行うには、就業規則において定めておく必要がある。
就業規則に定めた懲戒事由にあたる事実が、客観的に合理的な理由があるということになる。
そして、その事実からすると解雇もやむを得ないと考えられる場合には、懲戒解雇できることになる。
したがって、懲戒解雇をする場合には、労働者にどのような事実があり、その事実が就業規則のどの懲戒事由にあたるのかを明確にしておく必要がある。

(3)懲戒解雇の時期
就業規則に定めた懲戒事由に該当する事実が発生してから、7年以上が経過した後に行われた懲戒解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると是認されず、権利の濫用として無効と判断された例が存在する(最高裁判所平成18年10月6日台に小法廷判決 最高裁判所裁判集民事221号429頁)。
この事案では、期間の経過とともに職場における秩序は徐々に回復したことがうかがえ、懲戒処分時には企業秩序維持の観点から重い懲戒処分を必要とする客観的に合理的な理由を欠くと判断されている。
したがって、懲戒事由にあたる事実が発生し、懲戒処分が必要と判断される場合には、速やかに懲戒の手続きをとる必要があることになる。

労働に関する法律問題

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