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研究レポート

5 時間外労働・休日労働と割増賃金

著者:弁護士法人リバーシティ法律事務所

2008/9/5
(改訂)2011/3/29
(改訂)2016/ 4/ 8

1. 時間外労働

1 労働基準法(以下「労基法」という。)第32条により、原則として、使用者は労働者を1週間に40時間、1日8時間を超えて働かせることはできない。

2 ただし、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と、書面により協定を結んだ場合には、労基法の労働時間の制限を超えて働かせることができる(労基法第36条1項)。この協定のことを以下「36協定」という。
 36協定は、使用者に対して、労基法の労働時間規制違反を免れさせる効果を持つのみであり、36協定があったとしても、そのことから直ちに労働者が時間外労働義務を負うわけではない。労働者に時間外労働義務を負わせるには、36協定だけでは足りず、就業規則や労働協約に時間外労働を命じうる旨が定められているか、労働者が個別に同意することが必要である。

3 したがって、労働者に時間外労働をさせることが想定されている企業においては、就業規則や労働協約、労働契約に「業務上の必要がある場合には時間外労働を命じうる」旨を定めておき、さらに労働者の過半数を組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との間で協定を結ぶ必要がある。

4 なお、労働者の過半数を組織する労働組合と36協定を結んだ場合、当該労働組合に加入していない労働者に対する関係でも、使用者は労基法の労働時間規制違反を免れることになる。ただし、当該労働組合に加入していない労働者が時間外労働義務を負うかどうかは、就業規則や労働契約の内容によるので、注意が必要である。

2. 割増賃金

1 使用者が労働者に法定の時間を超えて労働をさせた場合には、その労働時間について2割5分以上の率で計算された割増賃金を支払わなければならず、休日に労働させた場合には、3割5分以上の率で計算された割増賃金を払わなければならない(労基法第37条1項)。

 また、時間外労働が一箇月について60時間を超えた場合には、その超えた時間については、5割以上の率で計算された割増賃金を支払わなければならない(同項但書)。
 なお、資本金額が3億円以下などの所定の条件を満たす中小事業主については、当分の間、労基法第37条1項但書は適用されない(同法第138条)。

 中小事業主に該当するか否かについては、
福岡労働局のウェブサイト「適用される割増賃金率判断のための、中小企業該当の有無についての確認」
http://fukuoka-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/_119554.html
が詳細な説明をしている。

 午後10時から午前5時までの深夜に労働させた場合には、2割5分以上の率で計算された割増賃金を払わなければならない(37条4項)。

2 休日については、労働者は労働義務を負わないので、労働時間規制の枠内にないことになり、時間外労働を観念することができない。したがって、休日に8時間を超えて労働させたとしても、休日の割増賃金を支払う必要はあるが、さらに時間外の割増賃金を支払う必要はない。ただし、休日の深夜に労働させた場合には、休日の割増賃金と深夜の割増賃金を支払う必要があることには注意が必要である。

3. 適用除外

①  「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」(労基法第41条2号)
②-1「土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(ただし林業は除く)に従事する者」(同1号)
②-2「動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業に従事する者」(同1号)
③  「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」(同3号)
上記の者については、労基法の労働時間、休憩および休日に関する規制の適用はないので、時間外の割増賃金や休日の割増賃金を支払う必要もないことになる。
2 ただし、深夜の割増賃金については、1週間40時間、1日8時間の法定労働時間内であっても、深夜に労働させた場合には割増賃金を払わなければならないので、労働時間に関する規制にはあたらない。
したがって、上記の者であっても、深夜の割増賃金については支払義務があることには注意が必要である。
特に、「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」については、一切の割増賃金が不要との誤解がみられるところであるが、深夜の割増賃金は支払わなければならないことに注意が必要である。
 3 「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)については、日本マクドナルド事件判決(東京地方裁判所判決平成20年1月28日)において、以下のような判断基準が示されている。

  『原告が管理監督者に当たるといえるためには,店長の名称だけでなく,実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められるものでなければならず,具体的には,①職務内容,権限及び責任に照らし,労務管理を含め,企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか,②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか否か,③給与(基本給,役付手当等)及び一時金において,管理監督者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断すべきであるといえる。』

  日本マクドナルド事件は、現在控訴審で争われており、確定した判断ではない。
  もっとも、以下に示す行政通達とは方向性が一致しており、日本マクドナルド事件判決と同様の視点から労働基準監督署の行政指導が行われると予想される。

  『一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を越えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されなければならないものである。具体的には、管理監督者の範囲については、資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があり、賃金等の待遇面についても留意しつつ、総合的に判断することとしているところである(昭和22年9月13日付け発基第17号、昭和63年3月14日付け基発第150号。)。』(平成20年4月1日付け基監発第0401001号)

  企業内において、いわゆる「管理職」にある場合であっても、上記の判断基準によると労働基準法上の「管理監督者」には該当しない場合がありうることに注意が必要である。


(追記)
日本マクドナルド事件は、平成21年3月18日、控訴審において、会社側が元従業員に対し約1000万円を支払うという内容の和解が成立したとの報道がなされた。

(追記2)
厚生労働省は、平成20年9月9日付で、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」と題する通達を出し、店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かの判断要素を示した。
また、同時に公表された「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」と題するパンフレットは、全業種を対象とした内容となっている。
これらの通達、パンフレットは、日本マクドナルド事件第一審判決および従前の通達と同様の基準を示している。

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